今の姿からは、あの挫折続きだった12歳から18歳の彼を想像するのは難しいでしょう。けれども、12歳の一年間、そして高校一年生の同窓会の席上で、彼だけでなく彼を知る多くの仲間たちが、漠然とではあるものの、今の彼に続く一本の道を共に夢見ることはできたのです。

 現状に対する正しい認識は、人生をわかったつもりになってがっかりするためのものでは決してありません。未来に夢を見て、その実現のために克服すべき課題としてあるものです。夢を実現するために、努力と工夫が必要なことは言うまでもありませんが、彼の生き方を見ていて気付かされるのは、どんな苦境に立たされても決して心を折らないことの大切さです。「諦めた瞬間に試合は終了する」というのは漫画『スラムダンク』で安西監督の口にする有名な一節ですが、「心が折れた瞬間に夢は潰える」と言い換えることができそうです。また、目的の場所に至る道は、決して一本道ではないのだということも、彼が証明してくれました。

 たどり着きたいと思うのであれば、歩き出すこと。そこにたどり着くために、歩き続けるということ。

 夢への道のりは最短距離である必要などないのです。遠回りでも、歩き続けている限り、間違いなく一歩一歩夢に近付いているということを忘れてはならないのです。

 






















 

これから中学生となり、あるいは高校生となる生徒諸君にも、どのような未来が待ち受けているかわかりません。夢を持ちましょう。夢を持ち、その実現のために努力と工夫を続けましょう。そして、何があっても心を折らず、自分を磨き続けていくことが大事です。

 志あるところに道は拓けるのだということを、君たちの先輩が証明してくれたではありませんか。

―おわり